大衆演劇劇団史大衆演劇

劇団史

第二十四回『富美男15歳での再デビュー』

2015.08.24 公開

一人の役者がこれだけのお客さんを感動させられるなんて凄い仕事だ、もう役者をやるしかない。そう思った。

武生に呼ばれ上野で食事を済ませると、富美男は劇団の楽屋に遊びに行った。テレビを見ながらゆっくり寛いでいたところ「お前、出ろ!」と突然、舞台に呼ばれてしまう。
役者の一人が急病で出演できなくなったのでその穴埋めで出ろという、三枚目の格好をさせられ教えられた通りの台詞を舞台に出て言った。「わーっ!」と客席が沸いているではないか。
その瞬間、富美男の中で眠っていた役者の血が騒ぎだした。
一人の役者がこれだけのお客さんを感動させられるなんて凄い仕事だ、もう役者をやるしかない。そう思った。

ところがそれは大きな勘違いだった。福島と群馬での生活が長かったため知らず知らずのうち言葉が訛っていたのである。それに祖母の影響で青森弁が混じってどうやらとんでもない東北弁になっていたらしい。それがおかしくてお客さんにウケていただけだったのだ。
その勘違いのお蔭で富美男はまた役者への道をスタートさせることができた。
もう一度、喝采を浴びたくて翌日も舞台に出た。そして、次の日も・・・。
結局、富美男が前橋に戻ることは無かった。
梅沢富美男、15歳の再デビューである。

このエントリーをはてなブックマークに追加