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劇団史

第二十一回『兄、武生の初舞台』

2015.03.02 公開

父親が敵役から攻められると「父ちゃんになんてことをするんだ!」と舞台に上がっていった。

劇団を率いる座長として、またプロの役者として父の清と母、龍千代は自分の子供を舞台に出すことを最初はよく思っていなかった。
しかし、まだ幼い武生は舞台の一番前に乗り出して芝居を観ていた。父親が敵役から攻められると「父ちゃんになんてことをするんだ!」と舞台に上がっていった。そうなると客席から歓声が上がりお客様が喜ぶのが分かる、だがそこで芝居が止まってしまう。舞台上で敵役の役者が「おーい、子供の出る幕じゃないぞ」と言っても勿論いうことを聞かない。
そんなこともあり、父であり座長の清は武生を客席に出すのを嫌がっていた。ところが劇団の幹部達は客席の様子を伺いながら、ここはお客が喜ぶだろうというタイミングで武生を舞台に上げてしまう。

繰り返し舞台に上がっていくうちに武生も子供ながらにこれも芝居なんだと意識するようになっていった。舞台を観ているうちに自然と台詞を覚えていたようだ、武生が4〜5歳の頃である。
まだ子供であった武生は芝居の中で前後の台詞を聞いて、自分の台詞や芝居をしていたので、舞台とお客のやり取りや間合いが分からずに入ってきてしまい、思わぬ笑いをとっていたそうだ。なかなか子供らしいエピソードである。

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