大衆演劇劇団史大衆演劇

劇団史

第十三回『本拠地を東京に』

2013.12.09 公開

今までの狂言ショーと舞踏ショーに、新たに考えだした歌謡ショーを加えて東京公演の幕を開けた。

東京進出を機に劇団の本拠地を東京へ移し、二代目座長として武生が吉景館という名門劇場で初舞台を飾れたのは幸運であった。
「役者は舞台裏を見て覚えろ。楽屋でお茶を飲む暇があったら舞台を見ていろ、見ているうちに芝居が身に付く。」と、父清から聞かされていた武生は、いずれ座長になるのだという思いもあり暇さえあれば他人の芝居を見たり、照明係を買って出たり父の芸もとことん研究して演技の勉強をしていたが、まだ二十三歳という若さで座長となるのは不安なこともあった。世の中では映画だけではなくテレビも家庭に普及し始め大衆演劇の前途が厳しい時代である。

しかし、芯からの芝居好きでもあり自分なりに大衆演劇への夢もあった武生は大胆なアイデアを持っていた。
今までの狂言ショーと舞踏ショーに、新たに考えだした歌謡ショーを加えて東京公演の幕を開けた。座員一同引っ張りだしフライパンや金だらいをならしながら歌を歌わせた、これが下手ではあったが客に大受けして大成功した、二代目座長としては順調な滑り出しであった。

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